書評・最新書評

姜尚中 書評委員お薦め「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2010年12月19日

表紙画像

 (1)自我の源泉(チャールズ・テイラー著、下川潔ほか訳、名古屋大学出版会・9975円)
 (2)荒廃する世界のなかで(トニー・ジャット著、森本醇訳、みすず書房・2940円)
 (3)昭和(ジョン・W・ダワー著、明田川融監訳、みすず書房・3990円)

 期せずして3点とも翻訳ものになってしまった。共通しているのは、歴史との批判的な対話というところか。歴史の本質が現代にある以上、3点の本を通じて、著者たちが現代とどう向き合っているのか、その根本的な姿勢が垣間見える。
 (1)は、いま話題のマイケル・サンデルの師匠筋にあたるテイラー畢生(ひっせい)の大著であり、政治哲学の復権を語るならば、この本は欠かせない。ヨーロッパ哲学・思想史の大パノラマを見る思いがする。(2)は大作『ヨーロッパ戦後史』の著者で、最近他界した歴史家ジャットの、市場原理主義に代わる提言の書である。新たな社会民主主義の再興はありうるのか。(3)は、敗戦をまたぐ昭和という時代の多面的な歴史に光を当てた日本研究者ダワーの論文集である。国際関係、社会経済史、民衆史、メディアや映像論など、多様なジャンルを越境して描かれる昭和という時代は何と多面的なことか。(東京大学教授)

関連記事

ページトップへ戻る