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江上剛 書評委員お薦め「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2010年12月19日

表紙画像

 (1)墓標なき草原 上・下(楊海英著、岩波書店・各3150円)
 (2)なぜ危機に気づけなかったのか(マイケル・A・ロベルト著、飯田恒夫訳、英治出版・1995円)
 (3)井伏鱒二・飯田龍太往復書簡(山梨県立文学館編、角川学芸出版・4410円)

 (1)は、文化大革命時代に中国共産党が内モンゴル自治区のモンゴル族を虐殺し、漢民族の支配を確立していく過程を、生き残った人々の証言に基づいてまとめたものだ。目を覆いたくなるほど悲惨な内容。中国とは漢民族の国と思い知らされたが、共産党の支配が弱まれば各民族は群雄割拠するのではないだろうか。
 (2)は、危機管理のノウハウ本。問題解決能力ばかりもてはやされるが、リーダーは問題を発見する能力を磨かねばならないと教える。菅政権に読ませたい。
 (3)は、井伏鱒二と飯田龍太の往復書簡集。人生の達人が、お互いを気遣いながら交わした400通余りの書簡。井伏さんには大学1年生の時からお世話になった。懐かしさでしみじみと読んだ。昭和50年の書簡に牛窓の国民宿舎は鼾(いびき)が聞こえないとあるが、私も井伏さんの足跡を訪ねて泊まったことを思い出した。僕の鼾は外に漏れなかっただろうか。(作家)

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