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保阪正康 書評委員お薦め「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2010年12月19日

表紙画像

 (1)20世紀断層 野坂昭如単行本未収録小説集成 全5巻+補巻(野坂昭如著、幻戯書房・各8820円)
 (2)内訟録 細川護熙総理大臣日記(細川護熙著、日本経済新聞出版社・2625円)
 (3)毛沢東 ある人生 上・下(フィリップ・ショート著、山形浩生ほか訳、白水社・上2940円、下3150円)

 私の待望していた書を挙げたい。いずれも大著だが刊行自体に歴史的な意味がある。(1)は戦後社会と格闘してきた作家の小説を年代順に収めた著作集。この作家を慈しむ編集者がその著述一切に改めて目を通しつつ、著者の執筆意図や現在の感想まで含めながら「野坂昭如という存在」が実は「小説」そのものとわかるように編んでいる。
 昭和56〜57年の「哄笑(こうしょう)記」などに著者の戦後の視点がうかがえる。
 (2)首相経験者は必ず自伝や日記の類いを刊行すべしとの私の持論に沿っての選択。1993年に誕生した細川内閣は38年ぶりの非自民政権だった。わずか8カ月間とはいえその内実は日本政治史に残る。知性と真摯(しんし)な記述が印象的だ。
 (3)はイギリス人ジャーナリストの本格的評伝。毛沢東の誕生から死までを丹念に追い、その実像を描きだす。記述の深み、客観性は評伝の範たり得ている。
 (ノンフィクション作家)

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