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穂村弘 書評委員お薦め「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2010年12月19日

表紙画像

 (1)星座から見た地球(福永信著、新潮社・1575円)
 (2)自転車の籠の豚(渡辺松男著、ながらみ書房・2625円)
 (3)新撰21(筑紫磐井、対馬康子、高山れおな編、邑書林・1890円)

 (1)は「地球の全存在への愛」という大テーマを新しいスタイルで描き切ってしまった。(2)は異能感覚溢(あふ)れる短歌集。「鯨のなかは熱くて溶けてしまいそうと輪廻(りんね)途中の少女は言えり」「ぼくは土偶をならべてキスをしてみたい春がすみするもなかのおもい」など巨大な手が全てを掻(か)き混ぜるような自由さ。(3)は若手俳人のアンソロジー。言葉で世界が更新される。例えば「ことごとく未踏なりけり冬の星」(高柳克弘)とは事実としては当たり前だが、言語化されることで、一生他の星に行くことのない私という存在が照らし出され、その結果、今ここで見上げる星たちの命が新しくなる。「あぢさゐはすべて残像ではないか」(山口優夢)、「晩夏のキネマ氏名をありつたけ流し」(佐藤文香)、「うつし世に天覧席のありにけり」(外山一機)、「大プールに母の幾人入ることか」(谷雄介)、「虹見しと日記にありて憶(おぼ)えなく」(神野紗希)。(歌人)

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