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中島岳志 書評委員お薦め「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2010年12月19日

表紙画像

 (1)俺俺(星野智幸著、新潮社・1680円)
 (2)神的(しんてき)批評(大澤信亮(のぶあき)著、新潮社・2100円)
 (3)場所と産霊(ムスビ)(安藤礼二著、講談社・2100円)

 (1)は2010年代の幕開けを象徴する小説。「自己の代替可能性」を世の中から突きつけられ、承認欲求が空転する現在、時代の不安を見事につかんでいる。他者との分かち合いは可能か。ポスト秋葉原事件の世界を生きる必読書。
 (2)は文芸批評の再興を予感させる作品。人間の存在に付きまとう「食」という暴力を問う。宮沢賢治から北大路魯山人までを論じながら、自己との対峙(たいじ)を迫る一冊。文芸批評は終わらない。
 (3)は近代日本思想が生まれた瞬間に迫る思想書。「世界は多元的であるがゆえに一つである」。そんなテーゼを構築した西田幾多郎の哲学や折口信夫の文学は、その源流を新大陸アメリカに有していた。鍵になるのは18世紀ヨーロッパの神秘主義思想家スウェーデンボルグ。世界の思想潮流の裂け目にメスを入れ、日本思想史を大胆に捉えなおす。その構想力は圧巻。
 (北海道大学准教授)

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