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四ノ原恒憲 書評委員お薦め「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2010年12月19日

表紙画像

 (1)俵屋宗達 琳派の祖の真実(古田亮著、平凡社新書・819円)
 (2)小さいおうち(中島京子著、文芸春秋・1660円)
 (3)〈私〉時代のデモクラシー(宇野重規著、岩波新書・756円)

 書評した以外で、強く印象に残ったものを。(1)は、一般には琳派の祖とされる宗達を、近代美術史の視点から読み直す。結果、琳派という枠組みから大きくはみ出し、マティスらと肩を並べる日本美術史上でも別格の前衛性に満ちたモダニズムの画家という結論に至る。大胆な知的冒険に拍手。(2)は、ある女性の生涯を縦糸に、綿密な考証で戦前の昭和のモダンな暮らしを再現しつつ、そこここに潜ませた伏線が、意外な結末につながる。後味の良さが格別な小説であると共に、静かな戦争批判にもなっていて、心憎い。(3)は、フランスの思想家、トクビルを導き手としながら、他人と違う自分らしさを分断された「私」が追い求める現代日本で、「私たち」の問題を解決する新しい民主主義のあり方を模索する。著者の目配りは、広く、文章も柔らかい。専門的深度を持ちながら、一般の人にも読みこなせる本は、貴重です。
 (本社編集委員)

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