書評・最新書評

辻篤子 書評委員お薦め「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2010年12月19日

表紙画像

 (1)大気を変える錬金術(トーマス・ヘイガー著、渡会圭子訳、みすず書房・3570円)
 (2)グーグル秘録(ケン・オーレッタ著、土方奈美訳、文芸春秋・1995円)
 (3)宇宙は何でできているのか(村山斉著、幻冬舎新書・840円)

 世界をダイナミックに変えていく科学と技術、私たちとの距離を縮めてくれるのはやはり、人の物語だろう。
 (1)は、空気中の窒素を肥料として利用できるようにして人類を飢えから救った化学者の苦闘を描く。20世紀前半の出来事だが、資源の枯渇とそれを克服する科学と技術、さらにはその光と陰、まさに今日のテーマだ。
 知のありようをも大きく変えようとしているグーグルとはいったい何か。今年もまた世界を揺るがしたその群像を(2)が伝えてくれる。
 科学書として異例のベストセラーである(3)は、素粒子の謎と宇宙の誕生がつながった研究の最前線への招待状だ。難題に取り組む物理学者たちの素顔も楽しく、10年前とは一変した、まさに今の宇宙像を訪ねる興奮が味わえる。最先端に身を置く著者ならでは。あちこちの最先端に、こんな練達の語り手がもっといるのでは、と期待を抱かせる。
 (本社論説委員)

関連記事

ページトップへ戻る