書評・最新書評

斎藤環 書評委員お薦め「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2010年12月19日

表紙画像

 (1)ピストルズ(阿部和重著、講談社・1995円)
 (2)半分のぼった黄色い太陽(チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ著、くぼたのぞみ訳、河出書房新社・2730円)
 (3)身体の歴史 1〜3(アラン・コルバンほか監修、鷲見洋一ほか監訳、藤原書店・各7140円)

 (1)は形式主義的な手法を自在に操る作家・阿部和重が、満を持して放つ神町サーガの第二部。あらゆるフィクションが多重レイヤー化される中で、「女性性」の視点からの語り直しによる「歴史の重層化」をもくろむ作家の試みは一頭地抜きんでた。(2)は阿部より若い世代の作家による、古典的かつ重厚な構えの歴史大作。60年代後半に起きたビアフラ大虐殺を背景として展開する真摯(しんし)なラブストーリーは、私の中の「アフリカ」の風景を一変させるとともに、今世紀における「文学」の延命可能性をも確信させてくれた。(3)は身体イメージの時代ごとの変遷を扱った画期的大著。歴史的産物としての「身体」はいかに発見され、いかに眼差(まなざ)され、いかに衰弱しつつあるか。その栄枯盛衰が膨大な資料とともに緻密(ちみつ)に検証される。私たちの想像力と身体イメージとが、これほど緊密に結びつけられていることに、改めて驚かされる。
 (精神科医)

関連記事

ページトップへ戻る