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佐柄木俊郎 書評委員お薦め「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2005年12月25日

表紙画像

 (1)表現の自由VS.知的財産権(ケンブリュー・マクロード著、田畑暁生訳、青土社・2940円)
 (2)プロファイリング・ビジネス(ロバート・オハロー著、中谷和男訳、日経BP社発行、日経BP出版センター発売・2310円)
 (3)仮面の人・森鴎外(林尚孝著、同時代社・2310円)

 新自由主義改革の先達米国では、規制緩和により「知」や情報を企業が囲い込む動きが加速した。(1)はそれが莫大(ばくだい)な富を生みつつ、自由な研究や創造、途上国発展の阻害につながっている実態を鋭く描く。「パブリック圏の拡大を」が著者のメッセージだ。
 (2)では、個人情報が巨大ビジネスを生み、治安部門までが依拠し始めている米社会の歪(ゆが)みが浮き彫りにされる。小泉圧勝劇で「官から民へ」はいまや日本でも「錦の御旗」の観があるが、私有化、民営化は多数に幸福をもたらすのか、と考えさせられる。
 (3)は、留学からの帰朝(きちょう)を追ってきたドイツ娘を帰し、名家令嬢と結婚、「舞姫」発表、離婚と、文豪の身辺あわただしい若き時代の「謎」解きに挑んだ読み物。ドイツ娘との結婚を願い、軍医の辞表まで考えたという解釈だが、文献調査は確かで説得力がある。

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