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ワープする宇宙 5次元時空の謎を解く リサ・ランドール著

[評者]渡辺政隆(サイエンスライター)

[掲載]2007年08月19日

[ジャンル]科学・生物

表紙画像

 Warped Passages

 現代宇宙物理学の最先端からの報告

 最新の宇宙論に触れるたびに抱くのは、宇宙に果てはあるのか、広大無辺な宇宙における人間の存在とはいったい何なのかといった、考えれば考えるほど頭がぼうっとしてきそうな問いである。素人に納得できる解答が出されないまま、理論宇宙物理学の新しい学説が送り出されている。
 今回の新機軸は、われわれはブレーンと呼ばれる膜のようなものの上で暮らしているのかもしれないと説く「ワープした余剰次元」理論。それと、その理論の提唱者にして本書の著者が、アインシュタインやホーキングといった、まさに異次元の住人を思わせる天才ではなく、才色兼備の物理学者という点。
 では、その余剰次元とは何か。われわれが認識する世界は、縦・横・高さという3つの次元でできている。それに時間も入れた4次元の世界ならば、まあまあ常識で理解できる。しかし実際にはこれに、歪(ゆが)んだ(ワープした)第5の次元が存在するというのが余剰次元理論である。いや、こんな説明ではわからなくて当然。そもそも600ページにもおよぶ本書の内容を数行で要約できるはずがない。
 本書の半分あまりはアインシュタインから超ひも理論までの理論物理学史のおさらいに当てられている。かつてニュートンは、自分が他よりも遠くを見通せたのは、巨人たち(偉大な先人たち)の肩の上に乗っていたからだと語ったという。研究が進み知識が増えつのるに伴い、先端科学を理解するための素養も増大する。踏み越えるべき巨人の数も増すというわけだ。おまけに次元数まで増えてしまった!
 そこで本書の冒頭では高次の次元という考え方が、芸術家の遠近法になぞらえて説明されている。また、歴史のおさらいは、著者自らが提唱する最新理論が登場した必然性を踏まえている点で斬新である。新しい難解な理論が生み出される現場を垣間見られるエピソードも楽しい。難点があるとしたら、当事者が語る歴史特有の、細部へのこだわりだろうか。ともあれ、異次元宇宙にワープするには格好の1冊である。
 評・渡辺政隆(サイエンスライター)
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 向山信治監訳・塩原通緒訳、NHK出版・3045円/Lisa Randall 理論物理学者。米ハーバード大教授。

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