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鉄の骨 [著]池井戸潤

[評者]江上剛(作家)

[掲載]2009年12月13日

[ジャンル]文芸 社会

表紙画像


■純粋な若者が「談合」と向き合う

 主人公の平太は中堅ゼネコン一松組に入社し、現場一筋。ある日、業務課への異動を命じられる。そこは別名、談合課。談合は悪ではないかと尋ねる平太に、同僚の西田は「お前は建前の世界から、本音の世界に来たんだ」と言い放つ。自由競争になれば建設業関係者の多くが失業する。だから談合は必要なのだ。西田のこんな説明に、平太は割り切れなさを覚えながらも談合の世界に飛び込んでいく。
 一松組に2千億円の大型地下鉄工事の入札の機会が巡ってきた。当然、談合すると思っていたら一社単独入札宣言。脱談合だ。ここから一番札獲得に向けて平太の活躍が始まる。フィクサー、建設各社の談合担当者、政治家、検察、エリートバンカーが蠢(うごめ)き、驚愕(きょうがく)のクライマックスへと一直線に突っ走る。
 談合の闇を抉(えぐ)るミステリーという側面を持ちつつ、実は、平太という純粋な若者が、働く意味を自問し、悩み、追求する熱血青春小説。恋人の萌に、平太は「あのさ。俺(おれ)、サラリーマンなんだよ」と、談合という悪に手を染めざるを得ない心情を吐露する。組織人なら、この場面に胸がキュンとなるだろう。
 評・江上剛(作家)
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 講談社・1890円

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