書評・最新書評

楽しい私の家 [著]孔枝泳(コンジヨン)

[評者]江上剛(作家)

[掲載]2010年09月26日

[ジャンル]文芸

表紙画像

■新しい時代の、新しい家族像

 主人公ウィニョンの母は流行作家で、離婚を繰り返す奔放な女性。ウィニョンは、大学受験を控え、「十代最後を母さんと一緒に過ごさせて」と父の反対を押し切って、母と一緒に暮らし始める。彼女の新しい家族は、父の違う2人の弟だ。
 どのように父と母は出会い、結ばれ、自分が生まれたのか、自分とは何者なのか、恋とはどのようなものなのかなど、多感な18歳のウィニョンは悩み、母と直接ぶつかることで成長していく。そして「私は誰の娘かと言うまえに、ウィニョンである」という彼女なりの結論を見いだしていく。
 本書は著者自身をモデルにした小説である。家族を重んじる韓国で、シングルマザーとして父の違う3人の子供を育てた著者は「肩身の狭い思いから脱せずにいた」と言う。その思いから自らと子供たちを解放させるために新しい時代の、新しい家族像を描こうと思ったのだ。
 翻訳は拉致被害者の蓮池薫さん。男性でありながら母との関係で揺れ動く少女の心を見事に翻訳している。翻訳でしか海外文学を読めない者にとって、いい翻訳は最高の喜びだ。
 江上剛(作家)
     *
 蓮池薫訳、新潮社・1890円

関連記事

ページトップへ戻る