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オヤジ国憲法でいこう! しりあがり寿・祖父江慎著

[評者]高橋源一郎(作家、明治学院大学教授)

[掲載]2005年09月25日

[ジャンル]文芸 社会

表紙画像

 前文に記す—「若いってダメじゃん!」

 すいません。勘違いしてました。なにがって、これ、憲法に関する本だったと思ってたんですよ!
 そしたら、世のオヤジ代表である著者が、「いまどきのヤング」に向かって、「オヤジの心得」を説いた本だったのだ。だから、「日本国憲法」ではなく「オヤジ国憲法」——って、力が抜けるではありませんか。本屋の皆さん、この本を間違っても、憲法関係の棚に置かないように、と思っていたのだが、読み終えたいまは、逆にこう思う。これこそ、その棚に置かれるべき本だったのだ!
 「オヤジ国憲法前文」はこういう。
「オヤジとは、世界的、いや、宇宙的スケールで、『なんでもあり』な存在である。クサくていい。矛盾したことを言っても『あれはもう、しょうがない』と最初から期待されてないから楽だ。(中略)。オヤジは底抜けに自由である。
 一方、ヤングは、ほんのちょっとしたことに、『もう死んじゃいそう』というくらい、ヘロヘロになるまで悩む不自由な生き物である。(中略)オヤジとしては、ヤングの悩みや混乱に、宇宙のルールを従えて対峙(たいじ)する。
 すなわち、ここに5条15項の『オヤジ国憲法』を発布し、もってヤングに対して、『若いって、ダメじゃん!』と高らかに宣言するものとする」
 では、その「若いって、ダメじゃん」の中身とはなにか。
 それは突き詰めていくと「ヤングなときって、なにかと硬直しながら生きている」という言葉にたどり着く。それは、要するに「自分とは違う考え、違う立場の発言に対して、『正しいか/間違っているか』の二つの反応しかできない」「自分の理解の外側にも世界があるということを認められない」という考え方だ。そして「正しさを主張する者は、無闇(むやみ)に声だけがデカい」のである。
 そういえば、どこかの国の大統領や総理大臣も、それからどこかの国の新聞やコメンテーターも、「無闇に声だけがデカ」くはなかったか。ああいうのは、皆、ヤングで「お子さま」で、だから「ダメじゃん!」なのである。チョー納得!
 [評者]高橋源一郎(作家・明治学院大学教授)
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 理論社・169ページ・1260円/しりあがり・ことぶき 58年生まれ。漫画家。そぶえ・しん 59年生まれ。アートディレクター。

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