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ウンコな議論 [著]ハリー・G・フランクファート

[評者]望月旬

[掲載]2006年02月05日

[ジャンル]経済

表紙画像

 プリンストン大学の名誉教授による、ぶっちゃけ、道徳哲学の「入門書」だ。“雄牛の排泄物(ブルシット)について”と直訳できる原題ゆえか、異例の全米ベストセラー。ブレない政治家とか、思いつきでものを言う上司などに正しく呆(あき)れるために——彼らが〈知りもしないことについて発言せざるを得ぬ状況に置かれたとき〉演じはじめてしまう、ウンコな議論の本質とは何なのか、みごとに分析している。
 約100ページの小著だが、その半分を占める訳者解説がまた示唆に富んでいる。本書が、カントやヒュームの自由意志論はもちろん、『アホでマヌケなアメリカ白人』や『「知」の欺瞞(ぎまん)』などにリンクする問題をも扱っていること、インターネット社会に顕著な今日の言論傾向を考える手がかりにもなることなど……爆笑ものの語り口で、なにげに、うんとこさ教えてくれる。
 偽装や粉飾がはびこってしまった時代ならではの、哲学的「新作落語」として楽しむこともできるかと。
 [評者]望月旬(評論家)
   *
 (山形浩生訳/解説、筑摩書房・1365円)

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