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透析生活17年―新聞記者の移植体験記 [著]山本晃

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)

[掲載]2011年07月31日

[ジャンル]ノンフィクション・評伝

表紙画像

 腎疾患克服の医療現代史、良き医師、良き医療環境に出会ってのルポ、家族愛を軸にしたヒューマンドキュメント。頁(ページ)を閉じた後に、感性も知性も刺激される書である。
 著者は記者生活12年目に腎不全で透析生活に入る。1992年だ。それからの17年余、多忙な仕事と日々の定期的な透析(当初はCAPD〈腹膜透析〉、途中からHD〈透析装置を使用〉の併用)、その体験が逆に著者の人生観や職業観を鍛えあげたことがわかる。相手を見つめる抱擁の目に誰もが魅(ひ)かれ、医師、同僚、疾患仲間、政治家などの取材対象との間に密な関係が生まれる。
 銀婚式を前に、妻が腎臓提供を申し出る。その摘出と移植までの心理的葛藤と医療現場の流れ、そこには人間感情の善意の交流がある。活字を追う側も涙。こうして著者は透析生活と別れたが、手術前後に著者が見た「夢」は、腎がんで右腎摘出の私にもあらわれた。著者の記述は、腎疾患の患者の総意を代弁している。

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