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荒俣宏 書評委員お薦め「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2011年12月25日

表紙画像

(1)乱歩彷徨(ほうこう) なぜ読み継がれるのか(紀田順一郎著、春風社・2000円)
(2)新人文感覚2 雷神の撥(ばち)(高山宏著、羽鳥書店・1万3650円)
(3)三角寛「サンカ小説」の誕生(今井照容著、現代書館・3360円)
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 いつも気にかかる人、気にかかる著者の会心作に出会えた喜ばしい一年だった。『乱歩彷徨』は、探偵小説を創(つく)った乱歩が自作の行き詰まりと「探偵小説自体の限界」とを共に背負って苦闘した人生を追う。要所で名言を発する乱歩が「本格探偵小説は老熟できない」と言い、画期的な新人松本清張の出現を「一人の芭蕉」と頼むあたり、人生面でも名探偵だった手腕を知る。『雷神の撥』は、英文学の枠をはみ出す「驚知」の冒険者が、世界的な文化読み直しの機運と共振しつつ論じてきた千ページの足跡。漫画も名画も、細部にこだわれば同じ線と形にすぎない! そして、サンカ小説の「創始者」三角寛の怪しさに注目した一冊も、作者の人生変容がサンカ小説に食い込んでいく過程を暴く。戸籍をもたぬサンカさえ最後は戦争に加わって行くストーリーの変化がすごい。
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 荒俣宏(作家)

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