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石川直樹 書評委員お薦め「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2011年12月25日

表紙画像

(1)コンニャク屋漂流記(星野博美著、文芸春秋・2100円)
(2)鉄は魔法つかい 命と地球をはぐくむ「鉄」物語(畠山重篤著、小学館・1365円)
(3)今和次郎 採集講義(青幻舎・2625円)
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 漁師でありながら「コンニャク屋」という屋号なのはなぜか。ルーツをめぐる旅は、時間や空間を軽々と飛び越え、先祖の記憶をあぶり出す。(1)は、今年読んだノンフィクションの中では出色だった。
 (2)の著者は『森は海の恋人』で知られる気仙沼の牡蠣(かき)漁師である。対抗するのではなく、柔らかく吸収しながら前を向く姿勢に勇気づけられる。森・川・海の繋(つな)がりと鉄の供給によって海が再生することを願ってやまない。
 東北出身の今が考現学を始めたのは、関東大震災の直後である。破壊された街の復興を記録することの重要性を彼は理解していた。(3)は展覧会の図録として刊行されたが、豊富な図版と美しいデザイン、緻密(ちみつ)な構成に編集者の愛を感じる。この時代だからこそ、歩くこと・見ること・聞くことの重要性について再考したい。
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 石川直樹(写真家・作家)

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