書評・最新書評

柄谷行人 書評委員お薦め「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2011年12月25日

表紙画像

(1)黄金の夢の歌(津島佑子著、講談社・2310円)
(2)災害ユートピア(レベッカ・ソルニット著、高月園子訳、亜紀書房・2625円)
(3)イスラームから見た「世界史」(タミム・アンサーリー著、小沢千重子訳、紀伊国屋書店・3570円)
    ◇
 3・11原発震災以後、世界が一変したような気がした。しかし、震災以前に書評した本のほうがむしろ印象に残っている。(1)は現在の世界の基層に、遊牧民の世界を見る。「トット、トット、タン、ト」という蹄(ひずめ)の音がたえず聞こえてくる。それは日本だけでなく、世界各地で始まった民衆デモを予告するかのようだ。(2)は、地震ツナミのような災害が相互扶助的な共同体を自然に生み出すこと、しかし、原発のように国家が絡む災害は人々を敵対させること、さらに、それがまた社会変革に導くことを予見している。(3)は表題どおり、イスラム圏から見た世界史である。これを読むと、イスラム圏を外から観察するのではなく、その内部で生きてきたかのように感じる。昨年末からそこに起こった市民革命について深く理解するためには、このような本が必要である。
    ◇
 柄谷行人(評論家)

関連記事

ページトップへ戻る