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姜尚中 書評委員お薦め「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2011年12月25日

表紙画像

(1)記憶を和解のために(エヴァ・ホフマン著、早川敦子訳、みすず書房・4725円)
(2)遺体(石井光太著、新潮社・1575円)
(3)金大中自伝 I・II(金大中著、波佐場清・康宗憲訳、岩波書店・各4095円)
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 (1)「ホロコースト第2世代」の苦悩と葛藤、そして和解への道程が、自己との、そして他者との対話を通じて綴(つづ)られた感動の名作であり、本年度最高の作品。記憶を通じて和解に至る道筋が確かに存在することを教えてくれる。
 (2)震災と津波がもたらしたものは何か、生き延びた者たちは、本当にその悲惨な実態に目を向けてきたのか、膨大な数の「遺体」を通じて肉薄しようとする渾身(こんしん)のルポルタージュ。死者を弔うとはどんなことなのか、生き残った者たちは何をすべきなのか、本書の問いはずっしりと重い。
 (3)死刑囚から大統領に登りつめ、南北と日韓の和解をめざした政治家の自伝。人間的な弱さと強さを交えた肉声の数々から、人間・金大中の姿が浮かび上がってくる。金正日の急死という事態を受けて、本書の意味はますます大きい。
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 姜尚中(東京大学教授)

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