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後藤正治 書評委員お薦め「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2011年12月25日

表紙画像

(1)ホームレス歌人のいた冬(三山喬著、東海教育研究所・1890円)
(2)水の透視画法(辺見庸著、共同通信社・1680円)
(3)河北新報のいちばん長い日(河北新報社著、文芸春秋・1400円)
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 (1)は、朝日新聞の歌壇欄に登場して評判となり、やがて消息を絶ったホームレス歌人を追うノンフィクション。著者は、消えた歌人の足跡をたどりつつ人物像を深めていく。いつしかその像は自身の未来像にも重なり、さらに寄る辺なき現代の断層を映し出す作品ともなっている。
 (2)は、著者のエッセー集。時事問題を取り上げつつ、思考は事象の底へと向かう。深々とした思索と沈黙を喪失したいまの世を撃つ、警告の、あるいは箴言(しんげん)の書でもある。病のなか、身を削って記された文に言霊が漂う。
 (3)は、東日本大震災に遭遇した東北の地元紙・河北新報の日々を伝えるドキュメント。被災者でもある新聞人が、迷い、悩み、苦しみつつ届けた新聞は被災地でむさぼるように読まれた。新聞の意味と役割の原点を伝える。
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 後藤正治(ノンフィクション作家)

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