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山形浩生 書評委員お薦め「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2011年12月25日

表紙画像

(1)自己変革するDNA(太田邦史著、みすず書房・2940円)
(2)震災恐慌!(田中秀臣・上念司著、宝島社・1299円)
(3)筑豊炭坑絵巻(山本作兵衛著、海鳥社・6825円)
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 ベストというより落ち穂拾いの選書だが、(1)はヒトのDNAが生涯変わり続けるという、通俗知識を覆す驚愕(きょうがく)の事実を明解に解説。最先端分野での日本人研究者の活躍も勇気づけられる。震災関連書は山ほどあるが(2)は復興(無)策の問題点をいち早く指摘。本書が杞憂(きゆう)に終わらず、増税や金融引き締めなど最悪な対応ばかりなのに改めて嘆息。他に齊藤誠『原発危機の経済学』は、現実問題に社会科学を真摯(しんし)かつ冷静に適用し、日和らない結論を出して立派。(3)は明治大正期の筑豊炭鉱を炭坑夫が記録した驚異の大型画文集。世界記憶遺産登録を機に数十年ぶりの復刊。ユネスコの慧眼(けいがん)に脱帽。主張や価値判断抜きの淡々とした絵と文が描き出す異世界と時代模様は圧巻だ。同じく再刊の同著者『炭鉱に生きる』(講談社)は一部重複する内容ながら価格お手頃。
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 山形浩生(評論家)

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