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穂村弘 書評委員お薦め「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2011年12月25日

表紙画像

(1)こちらあみ子(今村夏子著、筑摩書房・1470円)
(2)25時のバカンス(市川春子著、講談社・620円)
(3)てんとろり(笹井宏之著、書肆侃侃房・1365円)
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 小説、漫画、短歌とジャンルは違っても、いずれも異形の傑作揃(ぞろ)い。作者たちにその意図はないのかもしれないが、偶然めいた必然の形で「人類の未来の希望」を描いてしまったようにみえる。
 (1)は世界から逸脱する魂のバイブル。この世のどこにも居場所のない「あみ子」がぼろぼろになればなるほど、まだ生まれていない未来が脈打つようだ。(2)は「人」と「人の姿をした人でないもの」との愛の物語。一頁(ページ)目から切ない。読み進めると、予測を超えた感覚の洪水に襲われて切な死にそう。(3)は一昨年26歳で亡くなった作者の遺歌集。〈本当は誰かにきいてほしかった悲鳴をハンカチにつつみこむ〉〈かなしみにふれているのにあたたかい わたしもう壊れているのかも〉〈これごっほ ごっほのみみよ これごっほ ごっほのみみよ がかのごっほの〉
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 穂村弘(歌人)

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