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福岡伸一 書評委員お薦め「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2011年12月25日

表紙画像

(1)ピュタゴラスの音楽(キティ・ファーガソン著、柴田裕之訳、白水社・3570円)
(2)かたち(フィリップ・ボール著、林大訳、早川書房・2625円)
(3)エピジェネティクス(リチャード・フランシス著、野中香方子訳、ダイヤモンド社・2520円)
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 書評に取り上げきれなかった秀逸作を。自然の多様性の根底には美しい幾何学的秩序が隠されている。この見方は時代を越えて連綿と受け継がれて来た。科学も芸術もそれを求めた。ピュタゴラス的世界観(1)。数式を全く使わない証明の優雅さを知れば誰もがそう信じたくなる。
 一方、自然の造形は確かに数学的な美に満ちているけれど、それはあらかじめ鳥瞰(ちょうかん)的な視点から設計されたものではなく、別の原理で、ある一点から相互作用によって発生してきたものとも見える。貝の渦。キリンの模様(2)。
 世界の成り立ちをどう捉えるか。それは、遺伝子万能論を脱しつつある生命観の問題についてもいえる。生物の姿かたちを変えるのは遺伝子上の突然変異だけではない。旧来の遺伝学(ジェネティクス)の外側(エピ)で生じている新しいパラダイムシフト(3)。
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 福岡伸一(生物学者)

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