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松永美穂 書評委員お薦め「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2011年12月25日

表紙画像

(1)雪の練習生(多和田葉子著、新潮社・1785円)
(2)半島へ(稲葉真弓著、講談社・1680円)
(3)世界文学とは何か?(デイヴィッド・ダムロッシュ著、秋草俊一郎ほか訳、国書刊行会・5880円)
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 (1)常に新しい語りの境地を目指す著者の意欲作。ホッキョクグマの一人称、といっても単なる動物物語ではない。語り手の「わたし」はクマであり人間であり亡命者であり作家という驚くべき設定なのだ。文学のさらなる可能性を示す越境小説。
 (2)暦の二十四節気をたどりながら綴(つづ)られる、新しい土地での生活。自然に向かって豊かに開かれていく感覚と、言語表現の細やかさに感嘆させられる。海と森が接近し、生と死が交錯する「半島」という土地のエネルギーが作品中にも溢(あふ)れている。
 (3)翻訳された文学だけが世界文学になれる。作品は翻訳によって新たな命を得るが、翻訳や編集によって相貌(そうぼう)が変化していくこともまた避けられない。書物の生々流転には読者も当然ながら関わっていく。ならば積極的にいこう!
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 松永美穂(早稲田大学教授)

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