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保阪正康 書評委員お薦め「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2011年12月25日

表紙画像

(1)レーニンの墓 上・下(デイヴィッド・レムニック著、三浦元博訳、白水社・各3360円)
(2)評伝ジョージ・ケナン(ジョン・ルカーチ著、菅英輝訳、法政大学出版局・3045円)
(3)新版原子力の社会史(吉岡斉著、朝日選書・1995円)
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 1991年のソ連崩壊直後にモスクワに赴いた折り、「我々は70余年もレーニンにだまされていた」との共産党幹部の声を聞いた。20世紀の壮大な実験がいかに壊滅したか、ワシントン・ポスト紙特派員が崩壊から2年後に著したのが(1)に挙げた書。邦訳は遅れたが、この書は歴史的な意味をもっていて、日本語で読めたのが何よりも嬉(うれ)しい。(2)はルカーチの筆になるからこそ意味をもつ。安易で公式的なケナン論の不可視の部分が可視化してくる。この外交官の存在を位置づけるには、歴史の試練に耐えてきた思索者の目こそがふさわしい。
 3・11のあと、数多くの原子力関係の書が編まれた。早くから科学技術への批判的論点を提示してきた著者の(3)は、既刊書に今年の状況を加筆して、日本社会の弛緩(しかん)を浮かび上がらせた傑出の書だ。
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 保阪正康(ノンフィクション作家)

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