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中島岳志 書評委員お薦め「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2011年12月25日

表紙画像

(1)困ってるひと(大野更紗著、ポプラ社・1470円)
(2)「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか(開沼博著、青土社・2310円)
(3)「ボランティア」の誕生と終焉(仁平典宏著、名古屋大学出版会・6930円)
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 (1)突然難病にかかった著者は、制度と闘い、自分と闘う。人間はいつ深刻な病にかかるかわからない。人は平等に「困ってるひと」になりえる。困難を受け止め、時に状況を笑いに変えながら、知的に前に進もうとする大野さんの姿は、他者への想像力を喚起する。傑作だ。
 (2)原発を受け入れた福島。そこに出来上がった「原子力ムラ」。地元住民が抱え込んだ不安、抵抗、諦念(ていねん)、悦楽、馴化(じゅんか)、動揺など、複雑な主体を描くことで、福島が原発を抱きしめて生きてきた軌跡をたどる。地方はなぜ自発的に中央に従属するのか。
 (3)ボランティアは「生きがいの創出」としてとらえられる。しかし、自己効用論的なボランティアは、時に「障害者を食い物にしている」と当事者から批判される。ボランティアのあり方を問う力作。
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 中島岳志(北海道大学准教授)

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