1. HOME
  2. 書評
  3. 「槍ケ岳とともに―穂苅家三代と山荘物語」書評 近代登山の大衆化の歩み

「槍ケ岳とともに―穂苅家三代と山荘物語」書評 近代登山の大衆化の歩み

評者: 朝日新聞読書面 / 朝⽇新聞掲載:2012年05月20日
槍ケ岳とともに 穂苅家三代と山荘物語 著者:菊地 俊朗 出版社:信濃毎日新聞社 ジャンル:趣味・ホビー

ISBN: 9784784071890
発売⽇:
サイズ: 19cm/207p

槍ケ岳とともに―穂苅家三代と山荘物語 [著]菊地俊朗

 どこからでもその特徴的な姿がわかる槍ケ岳は、北アルプスで人気の山の一つだ。山頂直下に立つ槍ケ岳山荘は大規模な宿泊施設であると同時に、シーズン中は医療や救援の基地ともなる。その山荘グループを営む穂苅家3代の足跡を山岳ジャーナリストがまとめた。長野県松本市内で営んでいた本業の竹細工店を写真館に変え、山小屋の赤字を補った初代、商社マンから転身、運営の基礎を強固にした2代目までの歴史は、近代登山の大衆化の歩みでもある。当代は山小屋のトイレ改善の専門家というのも時代の要請だ。穂苅家は江戸期の開山者・播隆上人研究にも熱心で、上人は穂高にも登っていた可能性があるという。魅力的な話である。
    ◇
 信濃毎日新聞社・1050円