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池井戸潤「ロスジェネの逆襲」書評 粘りと不屈の精神、本領発揮

評者: 逢坂剛 / 朝⽇新聞掲載:2012年08月05日
ロスジェネの逆襲 (半沢直樹) 著者:池井戸 潤 出版社:ダイヤモンド社 ジャンル:小説・文学

ISBN: 9784478020500
発売⽇:
サイズ: 19cm/382p

ロスジェネの逆襲 [著]池井戸潤

 バブル期に銀行マンになった、半沢直樹・金融シリーズの3作目に当たる。今回は、バブルがはじけたあと入社した、ロスジェネ(ロスト・ジェネレーション)と呼ばれる世代の社員が、半沢とともに熾烈(しれつ)な戦いを繰り広げる。
 東京中央銀行から、系列の東京セントラル証券へ飛ばされた半沢は、IT企業の電脳雑伎集団による、競合会社東京スパイラルの買収計画に、アドバイザーとして加わる。ところが、せっかく結んだ業務契約を、理不尽にも本家本元の親銀行に、横取りされてしまう。怒った半沢は、ロスジェネの後輩森山や、親銀行の同期行員の協力を得て、反撃を開始する。そして逆に、東京スパイラルとアドバイザー契約を結び、親銀行をぎゃふんといわせる策謀に、取りかかる。その、粘り強さと不屈の精神の発露が、池井戸作品の身上だ。実際にはありえない話かもしれないが、それを単純化した小気味よいストーリーは、猛暑をしのぐ一服の清涼剤、といえよう。
    ◇
ダイヤモンド社・1575円