村木良彦「映像に見る地方の時代」書評 〈現在〉を超えんとする仕事
評者: 後藤正治
/ 朝⽇新聞掲載:2012年09月02日
映像に見る地方の時代
著者:村木 良彦
出版社:博文館新社
ジャンル:産業
ISBN: 9784861159633
発売⽇:
サイズ: 19cm/304p
映像に見る地方の時代 [著]村木良彦
拙宅の本棚に『お前はただの現在にすぎない』という本がある。副題は「テレビになにが可能か」。刊行は1969年。この後まもなく、3人の書き手はTBSを退社し、テレビマンユニオンを立ち上げる。この本を手放さずにきたのは、刺激的でかつ、どこか含羞(がんしゅう)を含んだ表題のせいもあったろう。
随分と時が過ぎた。本書は、書き手の一人、村木良彦がテレビ局のドキュメンタリー作品を論評したエッセー集であるが、遺稿ともなった。「地方の時代・映像祭」がはじまったのは1980年。志と情熱を頼りに、地方局のテレビマンたちは毎年、ドキュメンタリーの秀作を映像祭に寄せてきた。村木は審査委員やプロデューサーとして映像祭にかかわってきた。
ますます刹那(せつな)のメディアとなっていくテレビ界にあって、地域、人々、歴史、時代……を見詰めるなかで〈現在〉を超えんとする仕事が、東京のキー局の外で在り続けてきたことを感慨深く思う。
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博文館新社・2310円