書評・最新書評

災害弱者と情報弱者 3・11後、何が見過ごされたのか [著]田中幹人・標葉(しねは)隆馬・丸山紀一朗

[評者]川端裕人(作家)

[掲載]2012年09月16日

[ジャンル]IT・コンピューター 社会 ノンフィクション・評伝

表紙画像

■多くの論点、議論のきっかけに

 科学技術と社会の関係を研究する「科学技術社会論」の立場から、東日本大震災後、膨大な情報にのみ込まれた我々の社会について検証する。中心的な関心は、我々が「見過ごしたもの」だ。
 津波の被災地では、自治体の一人当たり所得が少ないほど被害割合が増えるはっきりした相関を示し「災害弱者」(地域)の存在を発見する。復興の中でも、今後の防災・減災の計画立案でも、考慮しなければならない要素だろう。
 既存メディアもネットも程度の差こそあれ「原発事故や放射線問題に目を奪われ…地震・津波の苦しみのなかにある人々を見落としていった」とする部分は胸に刺さる。原発事故の問題は非常に重いが、紙面も人の関心も有限だ。「何かを見る」ことは、別の何かを見ないことでもある。それを自覚した時、我々はどんな眼差(まなざ)しを獲得しうるか。
 膨大なデータを解析し、多くの論点を詰め込んでおり、未消化な部分もある。議論のきっかけと捉えたい。
    ◇
筑摩選書・1575円

関連記事

ページトップへ戻る