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駐在保健婦の時代―1942—1997 [著]木村哲也

[評者]出久根達郎(作家)

[掲載]2012年09月23日

[ジャンル]歴史 ノンフィクション・評伝

表紙画像

■草の根の活動実態、生々しく

 戦時下、警察官の駐在勤務にならい、「健民立国」を旗印に、全国に駐在保健婦が配置された。その制度は終戦で解消したが、地勢上、交通不便な高知県は独自に復活させ、地域保健に力を尽くした。これは「高知方式」と呼ばれ、やがて全国に導入されていく。一九九七年、保健所法の改正により、駐在制は廃止された。
 本書は、高知県駐在保健婦であった著者の祖母と、その同僚たち十数人からの聞き書きを基にし、草の根の保健衛生活動の歴史をつづったもの。保健婦の手記は多いが、通史と実態を一般人向けにまとめた類書は案外に無い。
 酒の害を説明する会合を、酒屋の二階で開いたとか(地区の集会所が酒屋なのだ)、健康体操を教えたあと、皆で歌ったり踊ったりした(楽しませなくては人は集まらない)。受胎調節指導の時は、説得力があるよう老(ふ)け作りをした、など興味深い話が目白押し。惜しむらくは、勤勉な彼女らの報酬が記されていない。従って個人生活が不明。
    ◇
医学書院・2940円

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