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荒俣宏 書評委員お薦め「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2012年12月23日

表紙画像

(1)海藻(阿部秀樹写真、野田三千代おしば、誠文堂新光社・3150円)
(2)「腹の虫」の研究 日本の心身観をさぐる(長谷川雅雄ほか著、名古屋大学出版会・6930円)
(3)奇想の陳列部屋(パトリック・モリエス著、市川恵里訳、河出書房新社・5985円)
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 (1)は陸上植物に比較すると魅力が伝わりづらかった海藻を、美しく奥深く纏(まと)めた図鑑。海中写真とおしば標本が、知られざる海藻の美を伝えることに初めて成功したといえる。藻塩焼き神事から始まる海藻の文化史も読ませる。
 (2)は俗にいう腹の虫を扱った飛び切りの快著。江戸時代の医学では、人語を話し予言までする腹中の「奇虫」とされ、図鑑すら制作された。夜泣きから疳癪(かんしゃく)まで、古くは憑(つ)き物の仕業とされ、近代になってウイルス感染や神経症といった疾病と理解された「病気」の歴史が興味をそそる。珍と奇を鍵として西欧の王侯貴族が収集した自然物と人工物の秘宝館「ヴンダーカンマー」を語る
 (3)は、豊富な図版の奇妙さで圧倒する紙上博物館である。博物学的関心をひく本が今年は揃(そろ)った。
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 荒俣宏(し残した大仕事に着手する年となった。まず『ビーグル号航海記』の翻訳完成に邁進(まいしん)。でも年内に終わらず、来年へ突入する。)

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