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上丸洋一 書評委員お薦め「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2012年12月23日

表紙画像

(1)原発一揆 警戒区域で闘い続ける“ベコ屋”の記録(針谷勉著、サイゾー・1365円)
(2)明石海人歌集(村井紀編、岩波文庫・693円)
(3)泥かぶら(眞山美保・原作、くすのきしげのり・文、伊藤秀男・絵、瑞雲舎・1680円)
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 書評で取り上げられなかった本から。(1)は異色のドキュメント。福島第一原発から十数キロのところにある牧場で、吉沢正巳は、出荷できない牛に餌をやり続ける。なぜ? 原発事故の不条理に、「決死救命」の意地ひとつで立ち向かう。
 (2)の明石海人(1901〜39)は「深海に生きる魚族のやうに、自らが燃えなければ何処(どこ)にも光はない」とつづったハンセン病の歌人。岩波文庫に入ったことを喜びたい。〈鼻ありて鼻より呼吸のかよふこそこよなき幸(さち)の一つなるらし〉
 小学生のころ、生まれて初めて見た演劇が新制作座の「泥かぶら」。(3)の絵本で久々に再会した。様々な読みが可能だろうが、私は映画「道」のジェルソミーナを思い起こした。ただし「泥かぶら」はハッピーエンドだ。
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 上丸洋一(本紙連載に大幅加筆した『原発とメディア』(朝日新聞出版)を刊行。平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞を受賞しました。)

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