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小野正嗣 書評委員お薦め「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2012年12月23日

表紙画像

(1)レ・ミゼラブル(ユゴー著、西永良成訳、ちくま文庫・全5巻で2巻まで刊行、1巻998円、2巻1050円)
(2)トム・ソーヤーの冒険(マーク・トウェイン著、柴田元幸訳、新潮文庫・620円)
(3)子ども(ジュール・ヴァレス著、朝比奈弘治訳、岩波文庫・上下各819円)
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 世界文学の至宝(1)の新訳がついに始まった。貧者も敗者も、汚辱を受けた者も後悔に苛(さいな)まれる者も、つまり我々の内なる〈人間〉を、巨大な肯定の力が、赤児を抱く母のように抱擁する。文学史上不朽の名となった少年の物語の新訳(2)は、心の風通しをよくしてくれる。むふふと心地よい風にくすぐられているうちに、すべてが可能ではないにせよ、まだ何も決定的には否定されていなかった子供時代に連れ戻される。(3)は逆に、不幸な幼年期の物語。主人公の母の行為は躾(しつけ)なのか虐待なのか? 愛さえあれば親は子に何をしても許されるのか? 傷ついた幼い心を、鬼母の代わりに美しい風景が、それを描く言葉が優しく抱きしめる。文学は〈いま、ここ〉にある我々を受けとめ、掬(すく)い・救い上げる。
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 小野正嗣(4月に『ヒューマニティーズ 文学』(岩波書店)を刊行しました。)

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