書評・最新書評

後藤正治 書評委員お薦め「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2012年12月23日

表紙画像

(1)「安南王国」の夢(牧久著、ウェッジ・2520円)
(2)スウィング・ジャパン(秋尾沙戸子著、新潮社・1890円)
(3)棺一基 大道寺将司全句集(太田出版・2100円)
    ◇
 (1)は、ベトナム独立の夢を追い続けたグエン王朝の末裔(まつえい)と「国士」松下光廣を主人公に、日越百年にわたる交流史を掘り起こしたノンフィクション。歴史の渦にのみ込まれつつ、人々が抱いた志の航跡が余韻深い。
 (2)は、日米開戦とともにアリゾナの収容所に隔離された日系の若者、ジミー・アラキの生涯を追った評伝。後年、ジャズメンとして、日本文学の研究者として、「二つの祖国」に恩恵をもたらした。発掘ノンフィクションとして秀抜。
 (3)は、死刑囚の全句集。三菱重工爆破事件から38年、刑確定より四半世紀がたつ。俳句という表現に出会い、深化させてきたことに感慨を覚えた。「棺一基(かんいっき)四顧茫々(しこぼうぼう)と霞(かす)みけり」。幽明定かならぬ地平から罪と世と己を見詰めている。
    ◇
 後藤正治(自著の刊行は10年ぶりのエッセイ集『節義のために』(ブレーンセンター)のみ。仕事は全て来年へと持ち越した感あり。)


関連記事

ページトップへ戻る