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田中優子 書評委員お薦め「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2012年12月23日

表紙画像

(1)飲水思源 メディアの仕掛人、徳間康快(佐高信著、金曜日・1575円)
(2)東電OL事件 DNAが暴いた闇(読売新聞社会部著、中央公論新社・1470円)
(3)戦後史の正体 1945—2012(孫崎享著、創元社・1575円)
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 書評の機会を逸したがおすすめ、という本を選んだ。(1)は評伝である。題名は「井戸の水を飲むときには井戸を掘った人の労を思え」という意味で、今日の複合エンターテインメントの基礎を築いた徳間康快(やすよし)の面白さを存分に書いている。エピソードで人物を浮かび上がらせるその手法は、小説の源になった中国の『世説新語(せせつしんご)』を彷彿(ほうふつ)とさせる。
 (2)は今年の新聞協会賞を受賞したスクープのドキュメントである。推理小説を読むような面白さで、やめられなくなる。DNAの解析手法の進展でようやく冤罪(えんざい)が晴れたが、背後にある取り調べや差別の問題がしっかりと浮かび上がって来る。(3)は、この時期に出版したことを大いに評価したい。今この日本がこうである理由を考えさせられる。
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 田中優子(他誌および他紙の書評委員を務めていて、22年ぶりで朝日新聞書評欄に帰ってきた。学部長職の隙間を狙った集中読書の日々である。)

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