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松永美穂 書評委員お薦め「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2012年12月23日

表紙画像

(1)女が嘘(うそ)をつくとき(リュドミラ・ウリツカヤ著、沼野恭子訳、新潮社・1890円)
(2)今夜の食事をお作りします(遅子建著、竹内良雄・土屋肇枝訳、勉誠出版・3780円)
(3)長い道(宮崎かづゑ著、みすず書房・2520円)
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 今年もたくさんのいい本と出会えたけれど、質量ともに(1冊の量を含め)翻訳の充実が印象に残った。中国語では莫言がノーベル文学賞をとったし、新しい作品がどんどん翻訳されている。ロシア語も、シーシキンの『手紙』やソローキンの『青い脂』など、話題作が次々出版されている。世界の文学を翻訳で読める幸せに感謝したい。こうして並べると(1)と(2)の表題作は、メディアの世界で働く妻、夫婦の危機という設定に共通点があることに気づかされる。結末はそれぞれ違うけれど、どちらの作品にも、現実の厳しさを直視しつつ人間を包み込む温かさと力強さがあった。(3)はハンセン病の元患者さんの手記。これまで生きてこられた証しのなかから、多くの励ましと慰めを手渡された。
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 松永美穂(慌ただしい毎日が嫌になってブータンに旅行したけれど、滞在時間が短すぎて現地でも慌ただしくなってしまった(涙)。年明けに翻訳が3冊出る予定。)

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