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鷲田清一 書評委員お薦め「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2012年12月23日

表紙画像

(1)芸術実行犯(Chim↑Pom著、朝日出版社・987円)
(2)通天閣 新・日本資本主義発達史(酒井隆史著、青土社・3780円)
(3)西洋哲学史(神崎繁・熊野純彦・鈴木泉責任編集、講談社選書メチエ・1〜2各1995円、3〜4各1890円)
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 (1)時代に殉じることを拒み、羅針盤もなしにそこに身を晒(さら)してきたこのアーティスト集団の志は「答えられなくても、応えること」。お騒がせともとられるその活動は、アートの「王道」をこそめざしている。
 (2)は、大阪の中の外部ともいうべき新世界が、時代に翻弄(ほんろう)されつつもそのカオスの中で資本主義への免疫力を醸成しつづけた過程を抉(えぐ)りだす。中沢新一『大阪アースダイバー』(講談社)を下絵として敷くと、この都市の重層的構造がいっそう際立って見えてくる。
 (3)ここに引かれた数多くの新しい補助線によって、「哲学史」が一本の紐(ひも)で吊(つる)された物語ではなく、はじめて歴史らしい歴史になった。その歴史の藪(やぶ)にこれほど見晴らしのよい場所を開いてくれたことに感謝したい。
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 鷲田清一(来春に『〈ひと〉の現象学』(筑摩書房)を上梓(じょうし)予定。年明けから「哲学の臨床」と「所有論」の執筆にとりかかります。)

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