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出久根達郎 書評委員お薦め「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2012年12月23日

表紙画像

(1)デカメロン(ボッカッチョ著、平川祐弘訳、河出書房新社・6930円)
(2)異風者伝 近代熊本の人物群像(井上智重著、熊本日日新聞社・2500円)
(3)文芸別冊〔総特集〕いしいひさいち 仁義なきお笑い(河出書房新社・1260円)
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 本はまず面白くなくてはならぬ。ジャンルを問わぬ。その基準で三冊選んだ。
 (1)こんなにも知的で清新で、かつ情感あふれる日本語で訳された艶笑譚(えんしょうたん)は、近年稀(まれ)。ユーモアとペーソス、洒落(しゃれ)た暗喩、程よい皮肉の味は、井伏鱒二を思わせる。そういえば井伏の愛読書の一冊が、これだった。
 (2)熊本の方言で、いひゅうもん、といい、変わり者のことである。江戸期から現代まで実在した熊本人の、風変わりで愛敬者の伝記。本人に限らず子や孫に至るまでつづり、おのずと日本近代史を語っている。
 (3)自分を語らず、写真も拒否、どんな顔の漫画家か不明。本書で初めて素顔を見せた。いや本人による架空インタビューだが、本音を吐いていると思う。幻の作品も収録され、文芸別冊中、最高の企画。
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 出久根達郎(書評委員になり、多くの新刊を読んだ。改めて紙の本の良さを認識する。電子書籍時代の書評はどんな形になるのだろう。)

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