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吉本隆明という「共同幻想」 [著]呉智英

[評者]

[掲載]2013年01月27日

[ジャンル]ノンフィクション・評伝

表紙画像

 恥ずかしいことを思い出した。高校のころ後輩に「難しいけど」と吉本作品を薦めたなあ、ほとんど理解できなかったのに。著者も最初はそうで、先輩に偉そうにされないよう必死に諸作を読み込んだ。そして結論づけている。吉本は悪文家。しかも狙いなどなく「天然」だと。また吉本の「大衆はすばらしい」に理由の証明がないのは「吉本大衆神学」の「公理」だからと。
 だが、著者のかみ砕いた“翻訳”のおかげで吉本のスター性も見えてきた。晩年展開した乱暴な学校論に「なんだか尾崎豊」とツッコまれているが、戦後論壇が青春してたころの変な狂騒感を背負うことで、吉本の晦渋(かいじゅう)な文体は詩のように輝いたのだろう。
    ◇
 筑摩書房・1470円

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