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天のお父っとなぜに見捨てる [著]小嵐九八郎

[評者]

[掲載]2013年02月24日

[ジャンル]文芸

表紙画像

 『日本名僧奇僧列伝』を3年前に著した作家が、今度は新しいイエス像に取りくんだ。エジプトで新たに発見された古文書の翻訳という形で、処刑に至る物語がつづられる。イエスはひげ面の大酒飲みで、マグダラのマリアに迫って拒まれると、落ちこんで山にこもる。「求めるがんすよ、そしたら、与えられる」と著者の故郷秋田の方言で話もする。信者が読んだら卒倒しかねない人物造形だが、人間味に満ちている。
 ユダの裏切りについても、あえて師を売り、イエス派の結束を固めようとした、と独自の解釈を見せる。全編に猥雑(わいざつ)なエネルギーがみなぎり、宗教誕生の熱気が伝わってくる。
    ◇
 河出書房新社・3675円

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