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金曜官邸前抗議 デモの声が政治を変える [著]野間易通

[評者]上丸洋一(本社編集委員)

[掲載]2013年02月24日

[ジャンル]社会

表紙画像

■個人参加の運動支える実務性

 原発の再稼働を許すな。
 そう叫ぶ人々が、東京・永田町の首相官邸前に初めて集まったのは、去年3月29日だった。毎週金曜日の夕刻、大勢の人々が官邸前に詰めかけるようになり、夏には「再稼働反対!」を連呼する幾万の声が、官邸と国会議事堂周辺にこだました。
 著者は、この抗議行動を呼びかけた反原発団体の連合体「首都圏反原発連合」の発足に参画したフリー編集者。60年安保以来といわれる大規模な抗議運動の生成と発展を内側から描き出す。
 この抗議運動の特徴の一つは、論点を「反原発」「脱原発」の一点に限定していることだ。これに関係のないプラカードの類い、例えば、労働組合、市民団体の名前だけを書いた旗などを掲げることは「遠慮」してもらっている。所属より主張をアピールしよう、との考えからだ。
 老人や家族連れが参加できて、けが人や逮捕者を出さずに抗議を続けるにはどうしたらいいか。首都圏反原発連合のスタッフが腐心してきたのはそのことだと言う。スタッフの会議で話し合われるのは運動へのロマンではなく、事故を防ぐための具体策。地に足つけた「実務性」こそが個人参加の社会運動を支えていることがよくわかる。
 それにしても、デモで原発は止まるのか?
 昨年11月2日、国会正門前でマイクを手にしたある男性の発言(本書収録)が、この問いに答える。
 「最近ネットの書き込みなどには『官邸前は人が少なくなったのではないか』『叫ぶだけで何が変わるのか』と言うものが見られる。私は敢(あ)えて反論したい。『叫ぶことからすべては始まる』と。今まで叫ばなかった、言わなかったから3・11を招いたのではないのか」
 2月の金曜日、官邸前に足を運ぶと、寒風にあらがうように「原発反対!」と叫び続ける人々の姿があった。
    ◇
 河出書房新社・1785円/のま・やすみち 66年生まれ。「ミュージック・マガジン」編集部などを経てフリー編集者。

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