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「蟠桃の夢―天下は天下の天下なり」書評 難解な思想書を解説する

評者: 出久根達郎 / 朝⽇新聞掲載:2013年03月31日
蟠桃の夢 天下は天下の天下なり 著者:木村 剛久 出版社:トランスビュー ジャンル:エッセイ・自伝・ノンフィクション

ISBN: 9784798701356
発売⽇:
サイズ: 20cm/267p

蟠桃の夢―天下は天下の天下なり [著]木村剛久

 帯の背に、「山片蟠桃(やまがたばんとう)の生涯」とある。そうに違いないが、普通の伝記と思って読むと面くらうだろう。主人公の顔形が鮮明に見えてこない。
 蟠桃は江戸時代の大阪が生んだ町人学者である。米仲買の店の小僧から番頭になった。雅号の由来である。仙台藩の財政立て直しに妙策をもって成功する一方で、本を書く。太陽暦も作った。一年が三百六十五日に設定されている。
 大著『夢の代(しろ)』は、江戸期の独創的な思想書といわれ、難解なことでも有名である。本書はいっそこの本の解説書と紹介する方が正しいかも知れない。それでも、取っつきにくい。千三百枚の原稿を半分にした、とあるから縮約しすぎたのかも知れない。ムダが無い分、窮屈になった。
 本書はまず「あとがき」から入り、次に最終章を読むとわかりやすい。蟠桃が若い主人にあてた遺訓が、天才商人の人となりを表している。
 誰にも長所短所がある。短所は見捨てて長所を評価せよ、人の話には耳を傾けよ……
    ◇
 トランスビュー・2100円