書評・最新書評

千年災禍の海辺学―なぜそれでも人は海で暮らすのか [編]金菱清ほか

[評者]

[掲載]2013年05月12日

[ジャンル]社会

表紙画像

 東北学院大生らによる宮城県太平洋岸の現地調査を基にした論考集。例えば、多くの住民が、高さ10メートル超の巨大防潮堤に反対する気仙沼市魚町で聞き取りをしている。報道では「景観が損なわれ、観光業などに支障が出る」など、経済的な見地からの意見が目立つが、これは世間や行政を納得させるため住民たちが講じた「戦略」であると指摘する。現代の護符的価値「安全・安心」を超える恩恵を魚町の人は海から得、常に海を五感で感じながら生きてきた。高い隔てにより海と人が分断されると、暮らしの基盤そのものが失われてしまうのだ。
 素朴で、強烈な海辺の暮らし感覚は、津波に向けて船を出す「沖出し」など、他の論考でも光る。
    ◇
 生活書院・2625円



関連記事

ページトップへ戻る