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小野正嗣 書評委員が選ぶ「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2013年12月29日

表紙画像

(1)恋しくて(村上春樹編訳、中央公論新社・1890円)
(2)いつも彼らはどこかに(小川洋子著、新潮社・1470円)
(3)崩れゆく絆(チヌア・アチェベ著、粟飯原文子訳、光文社古典新訳文庫・1176円)
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 今年のノーベル文学賞はカナダの短編の名手アリス・マンローだった。(1)は、彼女の作品を含む「恋」にまつわる九つの短編を、翻訳の名手でもある村上春樹の訳で読める贅沢(ぜいたく)な本。しかも文学を愛する者たちを魅了してきたカフカの〈あの作品〉への深い愛に満ちた村上自身の短編入り! (2)は、〈世界文学〉という文脈で長編と短編の両方で高水準の作品を書き続ける小川洋子の最新短編集。それが人、動物、物であれ、マージナルなものに慎み深く触れる端正な言葉のたたずまいに感嘆のため息が漏れる。12月に南アのマンデラ元大統領が亡くなったが、3月にはアフリカ文学の父とも呼べるチヌア・アチェベが亡くなった。(3)は、いまや〈世界文学〉の古典となった彼の代表作の新訳。必読!
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 小野正嗣(小説『獅子渡り鼻』を刊行し、早稲田大学坪内逍遥大賞奨励賞を受賞しました。)


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