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赤坂真理 書評委員が選ぶ「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2013年12月29日

表紙画像

(1)黒い海の記憶(山形孝夫著、岩波書店・2100円)
(2)リンカーンの世紀・増補新版(巽孝之著、青土社・2520円)
(3)南無ロックンロール二十一部経(古川日出男著、河出書房新社・2520円)
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 大震災と原発事故という大量喪失に対して、一体どういう言葉が在りうるかと探していた。その模索の中で、(1)はそのベスト。のみならず「犠牲の物語」が、世界の歴史の根底にあるとする、驚くべき深さと射程の長さをたたえた書。衝撃だった。
 「大量喪失を乗り越える言辞」として私の頭にあったのはリンカーンの「ゲティズバーグ演説」だった。今なおアメリカ人と民主主義を鼓舞するあの言葉「人民の人民による人民のための政府」。が、その感動と劇場性こそ、今日までを貫く暴力連鎖の幕開けでもあった、と(2)は喝破する。
 (3)は文学史上のロックンロールで著者はさながらロックスター。どこからどう読んでもかっこいい。本当にかっこいい。南無!!
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 赤坂真理(今年も『東京プリズン』で賞をいただきびっくり、感謝。旅をした。変容の年。かたちは、まだない。『愛と暴力の戦後とその後(仮題)』(講談社現代新書)が来春刊行される。)

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