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隈研吾 書評委員が選ぶ「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2013年12月29日

表紙画像

(1)科学者が人間であること(中村桂子著、岩波新書・840円)
(2)庭師 小川治兵衛とその時代(鈴木博之著、東京大学出版会・2940円)
(3)日本建築集中講義(藤森照信・山口晃著、淡交社・1995円)
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 科学者、専門家が、自分自身、自然の一部であるという謙虚さを忘れたことから、近代の様々な問題が派生した、と中村桂子は3・11後の世界の問題を総括した。大森荘蔵の「死物を扱ってはいけない」という言葉に、中村は親近感を示す。死物を扱う専門家に陥りやすい僕自身の立ち位置についても、考えさせられた。
 自然の一部であることを忘れなかったがゆえに、小川治兵衛の庭は、西洋のどの庭園にもない魅力を発し続ける。その生成に鈴木博之は迫り、専門家の可能性の一つを示す。日本の伝統建築も、自然の側に立つことをめざした謙虚な作者によって作られてきたことを藤森照信は明かす。絵師・山口晃の立ち位置が絶妙で、自然の側と、作為の側の境界を、微妙にくすぐって、融(と)かしてしまう。
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 隈研吾(春に出した『建築家、走る』の韓国版が進行中。英国では『自然な建築』『小さな建築』の英訳を出版予定。翻訳は、(村上春樹の翻訳も手がける)A・バーンバウム氏。)

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