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内澤旬子 書評委員が選ぶ「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2013年12月29日

表紙画像

(1)変わるエジプト、変わらないエジプト(師岡カリーマ・エルサムニー著、白水社・1995円)
(2)生きていく絵(荒井裕樹著、亜紀書房・2310円)
(3)瀬戸内海のスケッチ 黒島伝治作品集(山本善行選、サウダージ・ブックス・2100円)
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 書評で取り上げる機会を逃した本から。(1)はエジプトの普通の人々の暮らしぶりを生き生きと綴(つづ)ったエッセー。著者の母は日本人で、エジプト人に囲まれ育った。エジプト事情に詳しく、日本人がどう知らないのかを熟知したかのような視点が、絶妙。(2)は精神科病院の造形教室に通う人々の作品とインタビューを通して、心の病とアートとの関係を考察する。絵を描くという行為が描き手本人になにをもたらすのか、そしてアートとは何なのか、これまでの概念にとらわれず、著者自身の言葉を捜しつつ立ち向かう姿に頭が下がった。小説家黒島伝治については(3)の刊行ではじめて存在を知った。90年前も今も、生き続けるつらさの本質は変わらないのかと思わせる秀作が揃(そろ)う。
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 内澤旬子(文庫『身体のいいなり』(朝日文庫)、新刊『内澤旬子のこの人を見よ』(小学館)、『捨てる女』(本の雑誌社)を上梓(じょうし)。)

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