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水野和夫 書評委員が選ぶ「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2013年12月29日

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(1)永続敗戦論 戦後日本の核心(白井聡著、太田出版・1785円)
(2)ビスマルク 上・下(ジョナサン・スタインバーグ著、小原淳訳、白水社・各4830円)
(3)罪人を召し出せ(ヒラリー・マンテル著、宇佐川晶子訳、早川書房・3150円)
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 3点に共通するのは、「歴史の断絶」に直面した為政者が、新たな国家の建設にいかに臨んだかが、のちの数十年、いや数世紀を決めてしまうことだ。
 (1)は日本が戦後とった軽武装・経済重視路線は経済的には大成功を収めたが、それは米ソ冷戦という特殊な状況でしかあり得なかったことを、韓国や台湾と対比しながら、説得的に論じている。この説に依拠すれば、その後の「失われた20年」にも合点がいく。
 (2)はプロイセンが宗主国ハプスブルク帝国から、(3)は英国がローマ・カトリック教会から独立を勝ち取るための、ビスマルクとトマス・クロムウェルの凄(すさ)まじい格闘ぶりを描いている。2人は巨大権力に屈せず、繁栄の基礎を築いたが、戦後日本には匹敵する人物がいない。
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 水野和夫(4月から国際関係学部で教壇に立つ。『成長のない社会で、わたしたちはいかに生きていくべきなのか』など共著3冊。)

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