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田中優子 書評委員が選ぶ「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2013年12月29日

表紙画像

(1)戦後『中央公論』と「風流夢譚」事件 「論壇」・編集者の思想史(根津朝彦著、日本経済評論社・6090円)
(2)「幸せ」の戦後史(菊地史彦著、トランスビュー・2940円)
(3)白洲正子 ひたすら確かなものが見たい(挾本佳代著、平凡社・1890円)
    ◇
 私たちはどういう時代を生きて来たのか、を考えさせられる一年だった。特定秘密保護法が成立したことで、(1)を思い起こした。かつてこの事件をきっかけに、多くの人が考えざるを得なかった言論の自由と自主規制の問題は終わったわけではない。まさにこれからの日本の課題である。
 (2)は、今の日本に至るまで、戦後の庶民たちがどのようにアメリカを受け入れて生きて来たのかが、自分の人生と重ね合わせて展望できる本だった。しかしそれが今日の日本を結果した。痛切に日々を思い返す1冊である。
 (3)は、日本人が捨ててきた「確かなもの」が行間から立ち上がる本だ。自然と人間との間に作り出してきた「型」を喪失した、その哀(かな)しみに満ちている。
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 田中優子(今年は『布のちから』が英訳されました。月刊「清流」の連載「鄙(ひな)への想い」をまとめています。松岡正剛さんとの長時間対談も終盤にさしかかり、来年には出ます。)

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